ALSOK不祥事の背景を考える 空港警備

業界人として悲しいことですが、警備会社大手ALSOK(綜合警備保障株式会社)の不祥事案として報道された、「宮崎空港有資格者未配置事案」を分析していきましょう。

週刊文集の記事ですね「空港保安に検定者未配置。少なくとも5年」。ここで言われている検定者は「施設警備1級」です。警備業法の施行規則に定義されており、空港施設警備内での警備には配置が義務付けられていると解されます。そして、保安検査、いわゆる手荷物検査には「空港保安業務1級」の配置が義務が明記されています。ここで疑問なのは、なぜ空港において2つの検定資格者配置が必要なのかです。

空港における警備需要は「施設」と「保安検査」で別になっています。多くの空港で、施設警備と保安警備の警備会社が違います。警備分野でも得手不得手はあるのと、保安検査は特殊であるからです。宮崎空港でも施設警備は別の会社です。

資格取得については、他の検定資格が警備業協会の受講で取得できるのに対し、「有限会社空港保安警備教育システム」しかなく、会場も東京、大阪と限られた居ます。

保安検査はどんな形態なのか。契約形態は空港に乗り入れる航空各社との契約になります。手荷物等に関する安全管理義務が航空会社に課せられているからです。そして、その実施状況の確認管理は国土交通省が行います。抜き打ち検査で国土交通省の担当官が搭乗客のふりをして、模擬危険物を持ち込んで検査で発見できるかチェックを行います。ひとたびテロとなれば、数百人の命が危険にさらされるからです。

ここに、施設警備1級検定者に対する検査はないわけです。当然、受注においては各種法律に準拠した配置になっているかの証明書類が必要です。警備業法施行規則に定めがあるので、提出書類には当然、施設警備1級資格者の名前を提出しているでしょう。

警備業法施行規則違反で行政処分、同じく同法における虚偽記載、国土交通省への公文書偽造、各航空会社との契約違反。えらいことです。「警備業を開業しよう その6 貴重品輸送ってなに?」でも出てきましたが、現金輸送会社の不祥事案では営業停止です。営業停止がでれば、各種公共入札参加は3~5年は無理ですね。もちろん、現在の空港保安検査の契約継続は難しいでしょう。

この件に関してALSOKは公式ホームページで謝罪文を掲載しています。ずいぶんあっさりですね。「お知らせ」欄でニュース欄ででかでかと掲載していない。内容を見てみましょう。表題に「関連会社」とあります。文末には「弊社の担当している空港には問題ない」と。

そうなんです。この宮崎空港の一件は「宮崎綜合警備株式会社」の問題なのです。この会社は関連会社です。非連結の持分法会社ですね。支配権は限定的とされています。警備業認可も宮崎県公安委員会なので、ALSOKへの法的ダメージはありません。もちろん、報道時の株価下落等のブランド棄損は手痛いでしょうが、基本的には支配権の及ばない関連会社が勝手にやって自爆しておりますというスタンスが見て取れます。

なぜこのようなことが起きたのか。言い訳はたくさんあるでしょうが、空港保安の特殊性に傾倒するあまり、施設警備の考え方を軽んじたことでしょうか。警備業界は人員が流動的です。航空各社の経費削減から契約料金もなかなか上がらない。当然、勤務者の給料も上がらない。前述のとおり、空港保安検査は東京、大阪にしか受講場所がないので、地方では旅費交通費の負担が大きい。資格を取らせる→給料安い→責任重大→辞める→新人採用で一からコストがかかる。悪循環ですね。そんな中で、当初はいたであろう施設警備1級検定者が辞めて、補充は後回しになったと思われます。

昨今の警備需要の高まりと、警備業界の人員不足に一石を投じる問題です。警備業者は襟を正さなくてはならないでしょう。

 

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