警備業を開業しよう その9 危機管理を学ぶ

さて、警備業の基本と業界について書かせていただきました。ここで、警備業を営むにあたって、重要な考え方「危機管理」について説明していきます。警備業の存在意義。安心安全にかかわるサービスの根底にある考え方である「危機管理」について理解できないと、真の警備サービス提供はできません。

「危機管理」という言葉は近年の造語で、英語の「リスクコントロール」訳したものです。訳したのは佐々淳行氏であるとされています。日本の危機管理の草分け的存在です。「完本 危機管理のノウハウ」は私の愛読書です。何度読み返したことか・・・。

本題に入ります。日本では安全にかかわる対応を保険に頼る場合が多いです。安全神話と保険信仰ですね。事件事故の発生リスクの分析は行わず、万が一には保険で損害をカバーする考え方です。損害に対する金銭的なフォローは危機管理の重要な要素ではありますが、全てではありません。

危機管理は事件事故の発生を予想分析し、予防手段を打ちつつ、事件事故の発生時の対応可能手順を策定する事です。

簡潔に書きましたが、警備業の管轄で例を挙げると、小売店の侵入窃盗事案があります。もしも深夜、無人の店舗に泥棒が入ったとしましょう。ドアガラスは壊されショーケースの壊され、商品が荒らされた挙句に盗まれたものもあります。この状況から損害を考えていきましょう。

従業員が出勤して初めて気づきます。それが07時頃です。パートさんでオーナーに連絡が行くまで時間がかかるでしょう。それから警察への連絡です。警察が到着して現場検証が始まりますが、検証中はオーナーでも検証エリアには入れてくれません。何がとられ、何が破壊されているのか、その応急の手配が遅れます。大体、1~2時間でしょうか。それから片付けが始まります。これも1~2時間と見積もると、4時間は営業できないと思われます。10時開店ならばすでに午前の営業は絶望的です。

この例で失われたものは何でしょう?物の損害は勿論です。加えて「信頼」なのです。物や営業できなかった日数の売り上げは保険がカバーできます。しかし、その日に足を運んだお客様は、突然の閉店を目の当たりにし、それが長期になるのかわかりません。当然、違う店に行くでしょうし、営業再開時期など意識しないのでそのまま来なくなる可能性があります。いつもの時間にちゃんと営業しているという信頼が失われてしまいます。

そして事件現場を目の当たりにした従業員の気持ちはどうでしょう。一般人にとって、事件現場に遭遇することは衝撃です。加えて第一発見者の場合には警察から色々と事情聴取されます。従業員の安全な職場で働くというオーナーへの信頼が失われます。事件が起こるような職場では働きたくないでしょうし、一度、そのような事が起きた職場で働きにくる人も多くはないでしょう。これが、深夜の閉店業務中に従業員が襲われたなどという事件であればなおさらです。

これらの被害を危機管理の考え方から分析します。

八王子スーパー強盗殺人事件」をご存じでしょうか。閉店作業中の従業員さんが殺された事件です。痛ましい限りです。閉店作業中が無防備で従業員へ常に生命の危機にさらされていると認識します。「発生リスクの認識」です

対策として閉店作業中も誰か保安係を作業別に配置して、見回りを行います。出入り口には頑丈なカギと防犯カメラ、夜間も暗くならないようにライトを設置します。犯人に防犯意識が高く、対応が素早いことをアピールします。「リスク発生の抑制」です。

侵入のターゲットにされても、頑丈な鍵と扉、割れにくいガラスで侵入されにくくします。高額な商品は頑丈なショーケースに保管するか、別の保護された倉庫に閉店後に移しておきます。「被害の極小化」です。

被害が発生ししても即座に分かるようにセンサーを設置します。今は安価に画像やセンサー検知信号をスマホやタブレットで確認できる機器があります。被害が発生した場合に被害確認チェックリストに従って被害状況を確認して復旧に必要な項目を確認します。緊急連絡先フローに従って、オーナー、什器業者、設備業者、仕入れ業者、保険会社、他の従業員へ連絡をします。次の営業開店が限定的か完全な状態でできるか否かが重要な分岐点になります。休業が確実と判断されるなら、HPやSNSでの告知を行い、来店されるお客様には、お店に立って個別に説明と案内をします。わざわざ足を運んでいただいて帰らざるを得ないのです。粗品も準備しなければなりません。「被害拡大防止(ダメージコントロール)」です。

ダメージコントロールは日常か対応手順書整備して、訓練を行わなければなりません。

小売店の経営でリスク分析です。ほかに経営リスクや包括的に事業継続リスク管理などがありますが、警備業でできることは何かを考えます。それが「巡回する保安要員」や「センサーの検知状況を見守る人」「緊急に駆け付ける人」なのです。すべてを自社の従業員で賄うのは、人件費等の面から妥当ではなく、保安要員が襲撃されるリスクも考えられます。防犯にかかわる危機管理の一部を外部委託するという考えです。「リスク移転」の考えに則って、警備業は成り立っています。

警備業が何を目的にしているのか。需要は何なのかを十分に認識できなければ、警備業を営むことは難しいし、安心と安全のプロとしての提案もできません。

 

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