警備業を開業しよう その6 貴重品輸送ってなに?

今回は3番目の警備サービス。「貴重品輸送」について解説いたします。

警備業法で3号警備とされるその定義は「三 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務」とされています。現金は勿論、有価証券、契約書、機密書類、個人情報、文化財等を貴重品と定義されます。また、核燃料輸送時の警備も貴重品輸送です。

皆さんは三億円事件をご存じでしょうか。戦後最大の被害額の強盗事件です。若い人でも特番とかでご存じの方もいらっしゃると思います。当時の現金輸送は行員さんが行っていました。ライトバンに現金を億単位で載せて、シートをかぶせる位で運んでいました。今の感覚からすると危ないですね。この形態が三億円事件を契機に問題視され、警備会社への委託へ一気に加速します。現金輸送というリスクを自行の行員から守り、尚且つ外部委託で浮いた時間を本来業務へ集中させる。加えて物流の考え方で効率よく銀行の本店と支店を巡回する配送網を構築して、事務作業の効率化を図る。現金輸送というビジネスモデルの誕生です。この「銀行アウトソース」はバブル崩壊による金融機関の経営効率化と、クレジット会社の隆盛で短期間で浸透していきます。

まずは銀行ATMのアウトソースです。銀行ATMは各支店の行員さんが現金を詰めに行っていました。店舗外設置だと初期にはブースの開放、施錠なんかもしていました。かなり行員さんの負担になっていましたが、ATMの利用率は上昇していきました。そこで、警備会社はブースの機械警備(1号警備で出てきましたね)に加え、タイマーで自動で開店、閉店できるシステムを開発して売り込みます。そして一緒に現金輸送で現金の補充も提案します。この形態のサービスは、今日の銀行にとって当たり前のサービスになっています。そしてこのサービスはさらに進化して現金を「銀行の支店→ATM」から「銀行の本店→警備会社→ATM」の流れにしてアウトソースの深化が図られています。ATMの運営のほとんどを警備会社に委託しています。

クレジット会社もATMに加えて「無人契約機」を配置して、この管理も現金輸送のスキーム加えてアウトソースして警備会社が運用します。「貴重品輸送」であるので、契約書類の回収も「貴重品」とされ3号警備に含まれて一般の会社が手が出せない業務なのです。一般の会社の個人情報を記載した書類や機密書類を支店間で輸送したり、専用の破棄施設へ処分のために輸送するサービスもあります。

これらのアウトソース業務の完成形が「セブン銀行ATM」です。全国の25,000台のATMの管理はアルソックがすべて行ています。こちらに詳しく載っていますね。現金の補充タイミング、ATM故障時と防犯信号受信時の駆け付け対応を警備会社が行うのです。今後は銀行事務も委託するようですね。

今後の貴重品輸送はどうなるのでしょうか。現金輸送はキャッシュレス決済がどこまで浸透するかによって変わってきます。日本の現金流通量は先進国では高く、紙幣の流通量に大きな変化はありません。しかし、今後の動向に注視しなければなりません。その他の貴重品の輸送需要はどうでしょう。こちらもペーパーレスが進んでいます。クレジットカードの入会はスマホの操作で完結してしまいます。それでも直筆サインの重要性と印鑑文化は当面はなくならないので、市場は縮小してもなくなりはしないでしょう。

貴重品輸送のコストに目を向けてみましょう。輸送車は車体費用に加えて改造費は300万程かかります。輸送は原則2名体制でなければなりません。相次ぐ現金輸送車襲撃事件から防弾チョッキを装備するのが当たり前になっています。一着10万円程度です。人件費に加えて装備品にも費用が掛かります。貴重品、現金を一時出来に警備会社で保管する場合は、銀行並みの金庫、警備センサーの設置、出入管理システム、防犯カメラを設置しなければ銀行はアウトソースしてくれません。規模によりますが軽く5,000万円は必要です。警備会社の中には災害時に強い設備とスタッフが1週間程度運用可能な備蓄を備えた管理センターを建築した会社もあります。もう要塞ですね。

業務受注になぜこれだけの投資が必要なのでしょうか。一例ですが警備会社自体が襲撃された事件「立川6億円強奪事件」があります。警備サービス提供にあたり防犯体制(教育体制)の不備を指摘され営業停止処分となった事例です。貴重品輸送を行うならこれぐらいの投資は必要なのです。よって貴重品輸送を行っているのは資力のある大手や中堅位なのです。起業してすぐには始められないでしょう。

 

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